再発見されたデザインという仕事

あくまでもメーカにおける話だが、
なぜ今デザインと言われる仕事が注目されているのかを考えてみた。


1 デザインの定義


問題や課題を定義し、それに対する対策からビジネスまでを考慮した
製品設計・サービス設計をここではデザインと呼ぶことにする。



2 製品開発で起きていること


2 - 1 製品機能仕様と役割


製品やサービスを設計する上で一番重要なことは、それの果たす役割を明確にすることだろう。
違う言葉でいえば、製品機能仕様・サービスコンセプトといったところ。


これまで製品の製品機能仕様を決めていたのは、ほとんどの場合、製品開発責任者だと思われる。


製品開発責任者の多くは、技術者である。


2 - 2 製品開発の不思議な役割と実情


技術者が顧客に接していることなんて、まずほとんどないため、
顧客が本当にほしいものを真剣にリサーチなどせず、手に入る情報から
問題を定義、それに対する解決方法の提示といった一見筋の通ったストーリを
製品デザイン会議などで発表する。


不思議なことに、デザイン会議で没になることなどほとんどない。
おそらく製品開発責任者より、製品について深く考えている人が
少ないからではないだろうか。


営業部や企画部がする仕事は、開発された製品をいかにうまく売るか、
品質保証部がする仕事は、いかに不具合をなくすか
会社は分業のための発明だったけど、あまりにも水平分裂されていて、
一番大切なところがぽっかり穴が空いているように感じる


2 - 3 悪循環


一番重要なのは、顧客にとって価値のあるサービスを開発し、ビジネスをデザインすることが会社がやるべきコアな部分なのだが、そこに注力しているのは、製品開発部であること。


そしてその開発=技術者は、よほどのセンスがない限り、
顧客インサイトをつかんだ製品コンセプトを考えられない。


さらに悪いことに、その製品ビジネスを考えるのが、製品開発をしていない人たちで、下手すると、製品機能やサービスコンセプトさえも深く理解していない。


そのため必要な機能開発ができず、ビジネスもデザインできないという結末になり、
顧客は、十分な価値が提供されないため、購入せず、
経営者は、投資回収率が下がり、目的である企業価値を最大化することができないということになる。


こんな感じが現状の製品開発の問題点かな。


3 求められていこと 水平分断をつなぐ


そこで、製品機能仕様定義からビジネスデザインまで、開発から製品販売までを一手に引き受ける人材が求められている。


それが今はやりのデザインナーと言われる古いようで新しい人材なのだろう。


単純に言えば、今まで十分に検討されなかった一番重要なところに対して、
人材が必要になってきているということだ。


昔からあった仕事なんだけど、そこに注目して仕事の役割をデザインという名前で再定義された、いや発明されたといったほうがインパクトがあって良いかも。


結局いいたかったことは、ちまたではやっているデザイン思考が重要なポイントではなく、そのようなデザイン人材がなぜ必要になってきたのかという文脈を理解するのが、重要でしょ、ということです。



あとがき 歴史は繰り返す


ウィナーの「サイバネティクス」が文庫で発売されたので読んでいたら、序章に上記と同じような問題が記載されていた。

内容は、以下のような感じ。

・科学者はあまりにも細分化専門化しすぎたため、他の分野については広く知っている人材がすくなくなった。
・それにより、通信の分野でとっくに解決されていることを、20年後神経生理学の分野で再発見されるようなケースがたくさんでてきた。
ライプニッツのように広い分野で活躍できた人には新しい価値を開発しやすい。
・それは、誰に何をお願いすれば良いか知っているためだ。

今も昔も歴史は繰り返される。

会社でも同じだろう。

製品を使う顧客について詳しく知っていること、その顧客に価値を提供するにはどのように進めていくべきか知っていること。この二つを十分に知る人材こそがデザイナーと呼ばれる再定義された仕事のようにとらえるととてもわかりやすい。