人間の歩行生成は身体性
人間は身体という物理的な制約がある。
むしろ、歩行という動作はその制約をうまく生かしたシーケンスとなっているのだろう。
1月の上旬に「行動発達研究会」というものに出席した。
その中で、東京大学でロボティクスを研究されている教授の公演があった。
行動発達などの生理学的分野におけるロボティクスという立場は、生理学で研究されている動作生成の仕組みを制御システムとしてモデル化し、実装した結果、そのシステムを評価し、新たな考え方に繋げるという役目があると考えられる。
公演された先生も、一般的な筋骨格-神経-脊髄-脳というような仕組みを、解釈に基づく学習機構や各機構のつながりを独自の制御システムで表現されており、その結果を公表されていた。
デイビット・マーが脳を理解する3つの段階(「ハードウェアによる実現」、「表現とアルゴリズム」、「計算理論」)によると、ロボティクスという分野が脳を理解するために重要な部分を担っていることが言えるはず。
少し本題と脱線してしまったので、人間と身体と歩行生成の話題に戻す。
その公演を聴いて、一度獲得した日常的な動作は最小限の仕組み(身体と神経系)で実現できるという学生のときに研究していた「神経振動子」の話を思い出した。
その究極は、受動歩行だと考えられる。
カーネギメロン大学のMcgeeがPassive Dynamics Walkingという論文を出しているが、その受動歩行を実現しているロボットの映像が以下のリンクである。
http://ruina.tam.cornell.edu/hplab/downloads/movies/KNEED1MV.AVI
どの関節にもアクチュエータがついておらず、まさに身体性のみで歩行を実現している。(傾斜上での歩行生成となっている)
人間と同様、各関節は、特にひざ関節を見るとわかりやすいが、関節可動域を制約している構造になっている。
つまり、歩行動作は、各関節の身体性制約とトルクフリーを繰り返すことだけで、実現できることになる。
もちろん、このロボットは重力エネルギーを利用して歩行しているため、傾斜した床の上をあるいているが、平地をあるためには、股関節を駆動することで、同様な動作が実現できるはずである。
このことから人間の動作発生を考えるには、身体性が重要になってくるということは、インテリジェンス・ダイナミクスという分野でも取り扱っている。(下の本を参考)
こんなことを考えつつ、お風呂で自分の歩行生成はどーなっているんだとうろうろ風呂場で歩いてみた。
そのとき、歩行を実現するために重要な制御のキーポイントがいくつか思いついたので、メモしておく。
ピッチング方向の関節制御について
『遊脚』
足を振り出すときに、股関節部を駆動するが、それ以外は基本、すべての関節(股関節・ひざ関節・足首関節)はトルクフリー。ただし、ロボットの場合と人間の場合では、関節がトルクフリーになった場合、重力と筋の釣り合う位置が違うのでその部分は考慮が必要。
『支持脚』
足首はトルクフリー。
ひざは固定状態。つまりこのタイミングにおいてはひざ関節の自由度がなくなり、ダイナミクスモデルは少しシンプルになると考えても問題ない。
股関節は上肢を安定状態に持っていくように制御
若干、つま先など足裏で地面反力を制御している感じはあるが、スムーズな歩行ではほとんど力が入っていない。
接地期においてのみつま先関節が動作する(トルクフリー)。それ以外は力がはいっていない固定状態。つまり、それ以外のタイミングでつま先関節のモデルを考慮しなくても良い。
こんな感じでメモしていると、ほとんどアクティブな関節制御が行われていない。
ロボットで実現する際は、
トルク制御でトルクフリー状態を実現
固定状態は位置制御で実現
発達する知能―知能を形作る相互作用 (インテリジェンス・ダイナミクス)
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